めざせナンバーワンDD

DDを極めすぎたアイドルヲタクの独り言

ヲタクと熱中症


あなたは熱中症になったことがあるだろうか。

これはとあるヲタクが、ヲタクに向けて発信する健康に快適にライブを楽しむために捧げる手記である。

ちょうど昨日、わたしは熱中症になった。
法事のため親族一同が田舎に集まった。今年一番の暑さと言われた昨日、真昼間から庭先でバーベキューをした。子世代もほとんどが成人し、散り散りになった親戚が集まる機会もそうないので、久しぶりの大宴会にテンションが上がり、2時間ほど全力自転車耐久レースが始まった。
最初は一番下の八歳女子の遊びに付き合うくらいの気持ちで出発したため、飲み物も持たずにいた。気づけば成人前後のバカのレースになっていた。汗だくなんてものじゃない。
全員めちゃくちゃに頭痛を訴え、ある者は足が震えだし、ある者は腕の硬直を訴え、わたしは寒気を感じた。草むらでのたうちまわった。
幸い携帯だけは持っていたので親に連絡し、軽トラで7人で自転車ごと病院送りとなった。全員熱中症だった。

ここまでは当たり前にもほどがある話なのだが、ここでわたしはひとつの疑惑について思い当たることになる。

ここからは六月のサッポロガールズリンクというアイドルイベントに参加したときの話になる。
2日間にわたり、何箇所かでされる大きめのイベントだった。わたしが参加したの会場は札幌はすすきのの地下に存在する小さな、古いライブハウス。出演者は対バンだったので10組程度いて、可愛い女の子たちが代わる代わる登場する。もともと踊るのが好きで群を抜いたDDのわたしは、初見でもだいたい振りコピできるというクソみたいにいらない能力を身につけていた。見るからに発汗量の多そうな(失礼)ヲタクたちと友に、汗を流した。
2日目の二部公演、お目当てのグループの子たちとチェキを撮り、喜々として家に帰る途中、その症状は突然襲ってきた。足が激しく震え、寒気を感じた。立っていることが困難になり、人の行き交う道で1人、しゃがみこむことになる。幸い親切な人に助けられ、なんとか地下鉄に乗車。最寄駅まで親に迎えに来てもらったのだが、家に着くとドッと疲労が溢れ床に倒れ込んだ。激しい頭痛と寒気、足の震えに加えて筋硬直してしまったのだ。つまりは脚が固まって全く動かない、腰から下の感覚を全て失ってしまったのだ。

もうここまで読んだ人は「あぁ、熱中症ね」となるかもしれないが、時は六月、そんなに暑い日だったわけでもない。わたしも家族も、別の可能性しか考えていなかった。
当時わたしはアレルギーや睡眠剤(滝のように溢れる鼻水で眠れていなかったため)等、何種類かの薬を飲んでいたのだが、睡眠剤の副作用が人よりも強く出ているということでそのアイドルイベントの前日から薬を切っていた。その睡眠剤、あまり強いものではないが当然一気にやめるのは一般的ではないものだったため、その症状が「薬をやめたことによる離脱症状だ」と考えたのだ。
車椅子で救急病院に運ばれ、止まらない震えや硬直に恐怖を覚えながらも採血をし、原因を探ろうとした。のだが、昔大きな病院の外科手術に関わっていた看護師である母に「こんなに血管出ない奴見たことない」とお墨付きを賜っているわたしから血液が採取されることはなかった。

結局そのときは原因は分からずじまい。当然のことながら適切な治療ができなかったためわたしの筋硬直は一週間ほど続いた。一生歩けなくなるのかと不安で、いい歳こいて毎日泣きながら最低限の生活をしていた。体が動かないため大学にも行けず、それが原因で必要単位が取得出来なくなり休学を余儀なくされた。
ライブでヲタ芸を打ちすぎて一年棒に振るだなんて、ヲタク冥利につきすぎる。

昨日熱中症になり、正しい熱中症の治療を受けて気づいた。六月のあれは熱中症だった。
もともと北海道の建物というのは、北国建築が基本なので他の地域の建物と比較して格段に機密性が高い。冬の寒さを耐え忍ぶための工夫があらゆるところに施されている。ましてやライブハウスなんてのは、重い防音扉で仕切られており、今回の事件が起きたmoleなどはステージが地下に存在する。どんなライブ会場でもそうだと思うが、ヲタクの流す汗で湿度の逃げ道が存在しない。
本来人間は発汗し、汗が乾くことにより気化熱を奪い、体温を下げる。だから暑い時は水分を摂取しろ、と言うのだ。汗を流し、気化させるために。
しかし熱気溢れるライブ会場では汗が気化することができない。加えて、ほとんどの人はタオルで汗を拭うだろう。体温を下げるためには、汗は拭きすぎてはいけない。
つまり何が言いたいかというと、どんなに水分をとっていても、熱中症になるときはなるのだ。外に出て自分を冷ます暇があるなら冷ます、ワンドリンクでアルコールを選択しないなど様々に対策はあるが、当日だけの対策では十分ではないと言えるだろう。また、ライブ会場では夏も冬も関係ない。冬の現場でだって熱中症はありうるのだ。
わたしと同じような境遇の人、つまり頻繁にライブに行く「ヲタク」の皆さんには、日頃から食べ物や水分補給、適度な運動などの対策をとっておいてほしい。全ヲタクが健康に快適にライブを楽しむためにも。ヲタク界でこのような悲劇が繰り返されないためにも(大袈裟)。

ご清聴ありがとうございました。